公認会計士試験の効率的勉強法
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0.はじめに
公認会計士とは、財務書類の監査証明およびその他会計に関する業務を業として営むことを国家により認証された職業人のことである。日本の公認会計士が行っている業務のうち公認会計士しか行えない業務として、監査業務があり、多数の公認会計士が監査業務に従事している。
また、公認会計士はそのほか、会計全般についての調査・立案・指導(会計業務)、税務書類の作成・税務相談(税理士法に従った税務業務)、コンサルティング(経営コンサルティング業務)からM&A業務、株式公開業務などに及ぶまで、様々な業務を行うことが出来る、会計のスペシャリストである。
なお、多くの公認会計士は、公認会計士2次試験合格後、監査法人という法人に就職し、上記のような業務を遂行している。
1.公認会計士試験の概要
公認会計士試験は、2006年実施の試験より、現行制度上の試験形態から、新試験制度へと試験制度が変更される。一般に公認会計士試験の学習時間は、最短で約1.5〜2年程度とされているため、以下の解説は全て新試験制度を前提として行っていくこととする。
@試験制度と科目・配点(予定)
公認会計士試験では、短答式試験と論文式試験の2種類の試験が実施される。短答式試験の合格者のみが論文式試験を受験することができ、論文式試験に合格した者が公認会計士試験の合格者とされる。
なお、現行試験とは異なり、部分的に科目合格制が導入される予定である。
短答式試験の合格者は翌年以降2年間のみ短答式試験が免除される。
論文式試験の合否判定は、全ての科目の合計点で行われるが、もし不合格だった場合でも、公認会計士協会が定める一定以上の点数を獲得した科目があれば、その科目は翌年以降2年間のみ論文式試験が免除される。
以上の試験制度の変更により、努力をすれば確実に合格に近づくことの出来る試験へと変わることが考えられる。なお、最終的な合格者は1500人程度とすることが想定されている。(2004年は約1200人)
・短答式試験
公認会計士になろうとする者として基本的な知識が体系的に理解されているかを判定するため、オーソドックスな問題がマークシート方式で出題される。5月後半〜6月前半の土・日2日間で実施予定。
財務会計論(現行試験制度の「簿記」と「財務諸表論」をあわせたものと考えられる。)
出題数 …30〜40問
配点 …200点
解答時間…180分
管理会計論(現行試験制度の「原価計算」に相当)
出題数 …20〜30問
配点 …100点
解答時間…90分
監査論(現行試験制度の「監査論」に相当)
出題数 …20〜30問
配点 …100点
解答時間…90分
企業法(ほぼ現行試験制度上の「商法」に相当するが、さらに証券取引法、有限会社法、独占禁止法なども範囲とされる可能性がある。)
出題数 …20〜30問
配点 …100点
解答時間…90分
・論文式試験
公認会計士になろうとする者として必要な学識および応用能力が備わっているかを判定するために、応用問題等も含め、論文形式で(計算も含む)出題される。7月後半〜8月に実施される予定。
会計学(短答式試験の「財務会計論」と「管理会計論」をあわせたもの)
出題数 …大問4問
配点 …300点
解答時間…240分
※出題は「財務会計論」が7割、「管理会計論」が3割程度の予定であり、現行試験制度の「簿記・財務諸表論・原価計算各200点満点」とさほど出題内容は変わらないと考えられる。
監査論(現行試験制度上の「監査論」とさほど変わらないと考えられる。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
企業法(現行試験制度上の「商法」の範囲を短答式試験で述べた「租税法」の出題範囲に変更したものと考えられる。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
租税法(現行試験制度では3次試験において出題されている。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
※試験範囲は、所得税法・相続税法・消費税法の基礎的な理論と租税訴訟法・租税罰則法・租税手続法の基本的事項とされている。また、科目の性質上、基礎的な計算が出題されるが、応用的な計算は出題されないものとされている。租税法に関しては、税理士試験のテキストなども合わせて参考にするとよい。
以上は必須科目である。以下は選択科目であり。経営学、経済学、民法、統計学から1科目選択となる。
経営学(現行試験制度の「経営学」に相当。範囲は経営戦略論・経営組織論・ファイナンス理論である。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
経済学(現行試験制度の「経済学」に相当。範囲はミクロ経済学・マクロ経済学である。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
民法(現行試験制度の「民法」に相当。範囲は民法典第1編〜3編を種として、第4・5編を含む。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
統計学(記述統計及び推測統計の理論を中心に金融工学の基礎的理論も含む。)
出題数 …大問2問
配点 …100点
解答時間…120分
2.公認会計士試験の全般的な学習の進め方
@科目面
公認会計士試験の試験科目は大きく区分すると、計算科目・理論科目の2種類に分けることが出来る。
現行の公認会計士試験では、
計算科目・・・簿記、原価計算、経済学
理論科目・・・財務諸表論、監査論、商法、経営学
(ここでは経済・経営選択とした。)
と区分できよう。
そして、公認会計士試験においては、計算科目が合否に重要な影響を与えてくる。
なぜなら、理論科目は論述が主で、基本的・標準的な論点(確実に得点しなければいけない問題)と応用論点(埋没問題)が割と明確に分かれるため、論文式試験上では大きく差をつけることが難しい科目といえる。
ところが、計算科目は、答えが数字という客観的な形で出てくる上、正しい処理を覚えており、それをミスなくこなしていけるかどうか、というところで大きく差がついてしまうのである。
ゆえに、公認会計士試験に短期合格するためには、計算科目の早期攻略が非常に有効である。そのためには、勉強期間を1年半〜2年と仮定すると、初めの約7ヶ月〜10ヶ月くらいは計算科目に特化して、計算科目の勉強を進めていくべきである。一度計算の力をつけてしまえば、あとは適度に問題を解くなどしてメンテナンスをしていけば、計算力はそう落ちるものではない。
理論科目は科目数も多いが、範囲のそれほど多くない科目も混じっており、受験上は短答式試験の7〜8ヶ月前くらいから始めても間に合うと考えられる。また、人間の脳の構造上、いったん覚えたものはどんどん忘れていくため、理論科目はできるだけ本試験に近い時期に暗記を進めていくのが効率的であるとも考えられる。
A学習時間等
公認会計士試験受験生の平均的な学習時間は、入門期(短答式試験前年の8月まで)で5〜6時間、上級期(短答式試験前年の9月以降)で8〜10時間とされている。
これらの勉強時間はあくまで平均なので、人によってまちまちであると考えられるが、一応の目安にしてもらいたい。
なお、公認会計士試験はどちらかといえば努力型の試験であるため、勉強した人はちゃんと報われることが多い。だからといって単純に勉強時間を増やせばいいというわけではなく、勉強の質や正しい生活スタイルを作れるか否かが合否に間接的に響いてくるということは忘れてはならない。
3.科目ごとの詳細
以下は、短答式試験に出題される科目について学習法を述べていくことにする。
@財務会計論
財務会計論は上で述べたように、現行公認会計士試験の「簿記」と「財務諸表論」を合わせたものとなっている。
「簿記」とは、企業や個人事業における取引を、一定のルールに従って記録したり、計算したり、集計したりする技術で、財務諸表作成のための一連の帳簿記入の手続きのことを指す。帳簿記入の手続きそのものを学習するということは、つまり自らの手を使って、実際に会計処理・記帳をする、という科目である。
「財務諸表論」はその名の通り、財務諸表を理論面から学習していく科目である。ただし、理論面といっても、会計学の学者の唱える諸説を学習する、「純粋な理論」だけではなく、「企業会計原則」や「財務諸表等規則」などの会計規則を使用し、現行制度ではどのように処理が行われているか、という制度面についても学習していくこととなる。
「財務会計論」は会計学の根幹を成すものであり、公認会計士試験でも最重要視されるべき科目とされているので、学習には相当の時間を割くべきであると考えられる。
以下、簿記と財務諸表論に分けて解説する。
ア)簿記
簿記に関しては、短答式の問題と論文式の問題が大きく異なってくる。
短答式問題は、1問1問が短く、数個〜十数個の仕訳を行えば解答できる問題が多い。また、論点ごと(例えば、減価償却・引当金・資本の増減等…)に1問といった出題のことが多い。こういった問題は、それぞれの論点をしっかりと学習して、覚えていればしっかりと解答することが出来る。それゆえ、短答式の問題が解けるようになるには、まずしっかりとテキストの各論点レベルの問題を網羅的に繰り返し、論点に漏れがないように学習していくべきである。
一方、論文式試験で出題される問題は、一般に「総合問題」と言われるものである。総合問題は、短答式問題の1問1論点という出題とは違って、1問で企業の1会計期間の損益計算書・貸借対照表・利益処分計算書・キャッシュフロー計算書などをまるまる作成させる、といった問題である。従って、1問に数多くの論点が出題されてきて、それを迅速かつ正確に処理し、なおかつきちんと累計できなければいけない。また、本試験クラスの問題になると、完答することはほとんど不可能である。実際、2004年実施の本試験では、簿記の合格点は200点満点で80点と推定されている。従って、学習法とすると、まずテキスト等で基本的な論点を学習したら、どんどん総合問題を解いていくというのが望ましい。
なお、その際できなかった問題は2度、3度と繰り返して、最終的には「問題を見ただけですぐ手が動く」という状態まで持っていくべきである。また、総合問題を解くときには、常に時間と戦略を意識することが重要である。「時間内に得点できるところを出来るだけ得点する」というように意識して学習すると、より効果が上がるだろう。
イ)財務諸表論
財務諸表論に関しても、短答式と論文式では出題内容が全く異なる。
短答式では、主として(というよりほぼ全て)「制度」に関する問題である。短答式試験は「企業会計基準」と各構造論点の個別基準(例えば、「税効果会計に係る会計基準」など)をメインに「財務諸表等規則」、「財務諸表等規則ガイドライン」などの詳細な規定からの出題も見られる。傾向としては、基本的な制度に関する選択肢が半分〜7割くらいと、但書や設定前文など、非常に細かい知識が問われる選択肢が3割〜半分くらいとなっている。
それゆえ、短答式試験の直前には基準の読み込みが不可欠となってくるだろう。
一方、論文式試験では、「理論」をメインに「制度」も混ぜて出題される。「制度」は「企業会計基準」に載っているもの程度を記述できれば、合格答案は書けると思われるので、基本的には予備校のテキストに沿って、「理論」と基本的な「制度」を学習していき、短答式試験直前に細かい規定を詰める、というのが一番良い学習法だろう。
A管理会計論
管理会計論は、基本的には原価計算から出題される。原価計算とは、発生した原価を適切に計算するための企業内で行われる計算である。
原価計算も、基本的には計算科目ではあるが、若干の理論も出題される。理論は「原価計算基準」で規定される「制度」面と、純粋な「理論」面両方の出題がある。なお、出題比率は計算:理論=7:3〜8:2くらいである。近年では若干理論の出題が増える傾向にある。
計算に関しては、簿記と同じようにかなりの計算練習が必要とされる。原価計算は基本的には短答、論文ともに学習法は異ならないので、まずテキストの基本的な計算方法をマスターした後、計算演習を繰り返していくのが良い。
理論については、配点が低いということもあり、ある程度書ければ合格点といえる。授業で習った理論を押さえていれば大丈夫であろう。学習を始める時期も上級期に上がってからでよい。
B監査論
監査論は、公認会計士の独占業務である「監査」について学習していく科目であり、監査論は公認会計士試験のみに存在する科目である。
監査は、基本的に「財務諸表の適正性を検査・報告する」ことであるので、その「検査」の方法(監査実施論)と「報告」の方法(監査報告論)の2分野が監査論の柱となる。これに、近年の企業活動等を反映して、証取法会計・商法会計などの分野が加わることになる。
監査論は基本的には短答式試験と論文式試験の問題に大きな相違はない。それゆえ、論文式試験合格を目標として、予備校のテキスト等を使用して、基本的な定義の暗記と重要論点の理解に努めていけば良い。その上で、短答式試験の1ヶ月程度前から「監査委員会報告書」や「監査基準設定全文」などの細かい知識をプラスしていくのが良い学習法といえるだろう。
C企業法
現段階では、企業法の範囲がはっきりしていないため、現行試験の「商法」に範囲を絞って解説していく。
商法という科目は、短答式試験と論文式試験では全く出題内容が異なるので、短答式には短答対策、論文式には論文対策が必要である。ただ、基本的には論文式試験に対応した学習をしていき、短答式試験は4月くらいから別個に対策すると言うのが賢いやり方である。
短答式試験は、基本的に条文や判例の内容を「知っているかどうか」の問題である。ゆえに、条文や判例の知識が必要とされる。ただし、条文を一字一句丸覚えする必要は全くないということには注意して欲しい。これは論文式試験にも言えることである。
論文式試験では六法の持込が可能となる。(正確には、試験場で「試験用六法」といのが配布される)論文式試験の問題は短答式の問題とは全く異なり、多くの問題は、「ある事例が与えられ、その事例においてどのような結論が導かれるかについて法的に論を展開していく」、という形式の問題である。これには、法律科目特有の「論文の書き方」(規範定立、検討、あてはめなど)をマスターすることが重要となってくる。上手に予備校等を利用して、普段の勉強でもなるべく自分で答案構成をする癖をつけることが重要になってこよう。
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