根底から学ぶ司法試験
司法試験論文試験用答案の書き方
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ここでは、司法試験論文試験用の答案の書き方を説明します。
一度もかいたことのない方は【1】の形式面の話から、各種答案練習会などを通じて書いたことがある方は、【2】内容面の話から読み進めてください。
【1】形式面・・ビジュアルにこだわる
司法試験の答案は、採点官の見易さを重視するため以下のような独特の「作法」があります。
@一文を短く
「ワンセンテンス・ワンテーマ」といわれるものです。一つの中に、一つの意味しかいれないというルールです。抽象的に述べても伝わりづらいので、下記の論文答案実例を参照してください。分量的には、一文を三行以内に収めるというのが一つの目安です。
A接続詞を多用し、かつ目立つようにする
前述「ワンセンテンス・ワンテーマ」は、論理の流れを明確にするためです。だらだらと文章をつなげると、前後の論理関係が不明確になりやすいので、一文を短く切った上で、その短い文章間を接続詞でつなぎます。これにより、前後関係が明確になります。また、接続詞の直後には「、」をつけ、一見して接続詞を拾えるように工夫します。これは、採点の際には接続詞をさっとみる採点官が少なくないという俗説によるものですが、これをやると確かに読みやすさが増します。これにより、接続詞で論理の流れが追え、一読了解できる答案となるといえるでしょう。
B改行
文章は普通、一つの段落は7〜8行くらいで構成します。しかし、司法試験では「ワンセンテンス・ワンテーマ」が段落にも拡張解釈され、段落内に一つのことしか書かないのが原則になっています。例えば、理由と結論を同じ段落に書かない、原則と修正を同じ段落に書かない、といったことです。
Cナンバリング
そして、段落のまとまりごとに、数字をふっていきます。この数字の振り方で、論文答案全体の構造を示すのです。この帰結として、ナンバリングしたときに数字が文字に埋もれないように、左側にスペースを空け文字の書き出しをやや右側にずらします。
D最後に「以上」とつける
これは未完成答案と完成答案とを区別する意味合いです。答案の末尾に「以上」と書きます。
E分量
司法試験論文答案は、裏表合わせて一問で4ページあります。それでも4ページは通常書きません。60分という制限時間を考えると、2ページ半から3ページといった分量が目安となります。長ければ長いほどよいように初学者の頃は考えますが、しばらく勉強をすすめると、逆にどのように分量を削るかで悩むようになります。本番の試験では1ページ強しか書いていなくてもA評価(最高評価)がきていることからも、分量の多寡というのは本質的ではないでしょう。実戦を考えると、短く仕上げる練習というのは現場で非常に役に立ちます。
【2】内容面
科目ごとの特性に関しては後述します。まず六科目共通のポイントについて述べていきます。
<六科目共通のポイント>
@事例にこだわる、くらいつく
問題文で提示された事情の意味を考え、そこから離れないように意識してください。えてして覚えてきた論点に引きずられて、抽象論を大展開し(これを「空中戦」といいます)、設問特有の事情を見逃すのみならず、ひどいときは設問と関係ない論点を大展開してしまうケースなども散見されます。問題文の一言一句の意味を吟味し、出題者の意図を考えて下さい。中には、出題者がわざと意味のない記述を混ぜてくる場合などもありますが、それも自分で「意味がない記述だ」と自信をもって言えるよう検討するのが望ましいでしょう。
A問われたことに答える
「憲法上の問題点を論ぜよ」「乙の罪責を論ぜよ」という問いですとさほど問われたことからずれたりはしません。しかし、「CD間の法律関係について論じた上、CがAおよびBに対してどのような請求ができるか」という問いに対し、CとDを取り違えたり、請求ではないことを書いたりすることはしばしばあります。さらに、この「問われたことに答える」というのが最も問題となるのは一行問題です。
例えば「弁論主義の下における証明責任の機能について、証明責任を負わない当事者の立証活動の在り方に関する規律に触れつつ論ぜよ」という問いが求めているのは@弁論主義におけるA証明責任の機能にB証明責任を負わない当事者の立証活動の在り方に関する規律に触れながら論じることですから、弁論主義から離れてはいけませんし、当該規律を適宜指摘していかなければ「問われたことに答えた」とはいえません。
また、しっかり「機能」の指摘をすることも不可欠です。この問題に限らず、一行問題は大抵窮屈な指定、限定が加えられています。知っている知識を吐き出したくなるのをぐっとこらえて、聞かれた形にアレンジしていくというのは論文本試験会場の現場では意外にしんどいものですので、普段の学習から「問われたこと」というのを強く意識するように心がけることが必要です。
B条文の文言解釈の姿勢を徹底的に示す
論点中心の学習をすると、どうしても論点ありきで条文がおろそかになりがちです。しかし、そもそも論点の多くは、条文の文言が一義的に定まっていないためそれを解釈する課程の中で生まれたものです。
したがって、いきなり論点を展開していくのではなく、条文のどの文言の解釈が問題になるのか、その要件はどの条文の文言から出てきているのか、といったことを積極的にアピールすることで、基礎がわかっている印象を読み手にあたえることができます。論文試験後の口述試験を受験すると、執拗に条文上の根拠を試験官は聞いてきています。
こうしたことからも、司法試験委員は「条文の文言解釈の姿勢」というものを強く求めていることが伺えます。そもそも法律家は条文を解釈し当てはめるのが商売ですから、それは当然といえば至極当然なのですが、試験勉強という観点で法律をやっていると、時間がたてばたつほどこの条文の大切さを忘れてしまう人が見受けられます。
C法的三段論法を貫く
事案から問題提起をし、一般化した上で規範定立を行い、それを問題の事案にあてはめて結論を出すという手順を踏むというのが原則です。そして、それぞれをしっかりわけることが求められます。
D複雑な事例ほど単純な答案を目指す
複雑な事案であればあるほど、考え出すととまらなくなりゴチャゴチャした答案を書きがちです。しかし、複雑な事案であればあるほど、シンプルな一読了解型答案を目指すことが要求されます。特に論文試験本番において、制限時間があるなかでいろいろ考え出すととまらなくなり時間切れになるという人も少なくありません。
数学の模範解答を思い浮かべてみて下さい。シンプルかつ的確な答案が模範解答たり得ます。また、海に落ちた、泳げる人と、泳げない人を想定してみて下さい。泳げる人は必要最小限のエネルギーでボートにたどり着き、そうでない人はめちゃくちゃに手足をばたつかせて体力を消耗してしまいます。
これの実践例は以下の答案をご覧ください。
<各科目ごとのポイント>
憲法の人権は下記のとおり、憲法の統治は「統治の三角形」を意識する、民法は請求と抗弁から組み立てる、刑法は答案構成では差がつかないので構成要件要素ごとの丁寧な検討と文言解釈の姿勢で差をつける、商法はとにかく条文、そしてリンクとリフレイン・・・と各科目それぞれの合格答案作成のポイントがあります。詳細は、当会の講座において懇切丁寧に実践を通じてお伝えいたしますが、ここでは一例として憲法の人権の問題を考えてみたいと思います。
【3】具体例を通じての検討
では、具体的な論文答案を見てみましょう。
まず問題を検討する前に、上記の六法共通のポイントに加え憲法・人権問題特有の基本的ポイントの概略を確認します。
◇人権処理パターンをある程度意識する
@誰のAどのような人権がB誰によって侵害されているのか、ということを明確にした上で、この順序で諸論点を処理していきます。@が自然人、または日本国民でなければその人権享有主体性を論じますし、Aが憲法上保障されていなければ、憲法上保障されるかの論証を、Bにつきこれが私人であるならば私人間効の論証をしていきます。その上で、かかる制約は許されるのか、という点につき権利の性質に着目しながら違憲審査基準を立て、そこに事例をあてはめて検討してく、というのが基本形です。
◇反対利益に配慮する
紛争が生じている、規制をかけられる、という事態が生じている場合、どちらかが一見明白に悪いということはまれであり、必ず双方に言い分と理があります。したがって、自分の立つ立場(違憲とするか合憲とするか)とは逆の立場の主張に対しても、一定のフォローを行うことが不可欠です。これは多くの場合あてはめのところでなされることが多いのですが、必ずしもあてはめのところでやる必要はなく、違憲審査基準定立のところで反対利益を盛り込んでもかまいません。
◇あてはめ重視
これは六法共通ポイントで述べた「事例にこだわる、くらいつく」の憲法における帰結なのですが、とにかく問題文の事例に徹底的にこだわってください。問題文の事案すべてを使い切るイメージで(前述のとおり意味のない記述はしっかり検討して切る)自分の立てた規範に当てはめていってください。
◇キーフレーズを自分の言葉で
キーフレーズというのは端的にポイントを示せる点で重宝します。しかし、そればかりを並べても本当に理解しているのかという疑問を採点者に抱かせることが少なくありません。これは統治の問題だけでなく、人権の問題でも当てはまる話であり、たとえば、「21条の保障の趣旨は、自己実現と自己統治の価値の実現・・・」と書く際、この「自己実現」や「自己統治」の内容を自分の言葉で書けるだけで答案の印象はだいぶ変わってきます。
例題1(平成11年度第一問)
受刑者Aは、刑務所内の処遇改善を訴えたいと考え、その旨の文章を作成して新聞社に当初しようとした。刑務所長は、Aの投書が新聞に掲載されることは刑務所内の秩序維持の上で不相当であると判断して、監獄法46条第2項に基づき、文書の発信を不許可とした。右事案に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。
<解答例>
1. 受刑者刑Aの投書をする自由が、刑務所長の文書発信不許可処分によって制約されている。
では、かかる制約は憲法上許されるのであろうか。投書の自由は、自己の意見を世間に問いかけるという点で自己実現の価値を有している。
また、投書の自由によって意見を表明することで世間に議論がおこり民主主義の発展に資するという点で自己統治の価値を有する。
したがって、自己実現の価値と自己統治の価値をその内実とする表現の自由(21条1項)によって、投書の自由は憲法上保障される。
2. そうだとしても、かかる自由は無制限ではなく、公共の福祉(12条後段、13条前段)による内在的制約を受ける。
(1) では、さらにAが受刑者であることを理由に人権制約がみとめられるか。
思うに、憲法は、在監関係の存在と自律性を憲法秩序の構成要素として認めている(18条、31条参照)。
したがって、在監者の人権に対しては、拘禁と戒護および矯正教化という在監目的に基づく必要最小限度の制約も認められるものと解する。
(2) では、本問制約はかかる必要最小限度の制約といえるであろうか。違憲審査基準が問題となる。
たしかに、刑務所内の実情に通じ責任者として管理する所長には所内秩序維持に関する裁量がある。そうすると、かかる裁量を尊重し、緩やかな基準が妥当す
るようにも思われる。
しかし、投書の自由は前述のとおり、自己実現の価値や自己統治の価値を有する重要な人権である。かかる重要性に鑑みると、厳しい基準が妥当すると思われる。
したがって、目的が正当で、手段が目的達成のために必要最小限度といえるときのみ裁量の範囲内として合憲であると解する。
3. これを本問について見る。
(1) まず、目的は、刑務所内の秩序維持にある。これは、受刑者の拘禁と戒護および矯正教化という在監目的達成のために正当といえる。
(2) 次に、手段であるが、ここでは上記手段を達成するために文書の発信を不許可にしている。確かに、刑務所内の処遇改善要求が新聞社に投書されると、新聞は不特定多数の人に目に入るものであり、掲載された場合、それを読んだ他の受刑者の問題意識を喚起するとともに不満を増長させ、所内の秩序を混乱させる可能性はある。しかし、読者の一意見の表明に過ぎない投書というものは、それが必ず新聞に掲載されるわけではない。また、もし掲載されたとしても、そこに所長がメディアを通じて反論をすることで他の受刑者の不満増長を防ぐことも可能である。さらに、それがかなわず、かつ他の受刑者に明らかな悪影響が認められる場合は当該新聞記事の閲読を制限するなどの手段を講じることも十分可能である。したがって、発信不許可による制限という手段よりもより制限的でない手段があるといえるため、手段は必要最小限度とはいえない。
4. 以上より、刑務所長の受刑者Aに対する文書発信不許可処分は、投書の自由を侵害するものとして、21条1項に反し憲法上許されない。
以上
例題2(平成12年第一問)
学校教育法等の規定によれば、私立の幼稚園の設置には都道府県知事の認可を受けなければいけないとされている。
学校法人Aは、X県Y市に幼稚園を設置する計画を立て、X県知事に対してその認可を申請した。X県知事は、幼稚園が新設されると周辺の幼稚園との間で過当競争が生じて経営基盤が不安定になり、そのため、教育水準の低下を招き、また、既存の幼稚園が休廃園に追い込まれて入園希望児及びその保護者の選択の幅を狭めるおそれがあるとして、学校法人Aの計画を認可しない旨の処分をした。
この事例における憲法上の問題点について論ぜよ。
<解答例>
1. 本問法人Aの、幼稚園を設置する自由がX県知事の不許可処分により制約されているといえる。
そこで、かかる処分は憲法上許されるか。
(1) まず、Aは法人であるが、法人も自然人同様の社会的実体であり、社会の重要な構成要素である。
したがって、権利の性質上可能な限り、人権の保障が認められる。
(2) 次に、幼稚園を設置する自由は憲法上保障されるか。
思うに、教育を受ける権利(26条1項)の背後には、子どもが人格的に成長する権利である学習権があると解される。
そして、幼稚園を設置することは、まさにこの子どもの学習権に対応するものである。
したがって、幼稚園を設置する自由は、憲法上26条1項によって保障されているものと解する。
また、この幼稚園を設置する自由は権利の性質上法人にも保障することが可能である。
(3) 以上より、法人Aに幼稚園を設置する自由は保障される。
2. そうだとしても、かかる自由は絶対無制限のものではなく、公共の福祉(12条後段、13条前段)による内在的制約を受ける。それでは、本問制約は公共の福祉による内在的制約
として許されるか。違憲審査基準が問題となる。
(1)たしかに、教育を受ける権利は国家に作為を請求する社会権であり、一般に、社会権の保障には政策的判断を要する。
したがって、行政府の裁量を尊重して、緩やかな基準が妥当するようにも思える。
しかし、教育を受ける権利の背後にある子どもの学習権には、国家の干渉を排除するという自由権的側面が強い。
また、子どもが人格的に成長する権利は、人格的発展に資するという点で重要であり、幅広い裁量を認めるのは妥当ではない。
したがって、厳格な合理性の基準をとり、制約目的が重要で、手段が目的と実質的関連性があれば合憲になると考える。
3.これを本問についてみる。
(1) まず、制約目的は、教育水準の維持と、入園希望児やその保護者の選択の幅の確保にある。これは、教育を受ける権利を実質的に保障するため、重要であるといえる。
(2) 次に手段であるが、ここでは上記目的を達成するために不許可処分による参入規制を行っている。確かに、不許可処分により幼稚園を新設させなければ過当競争が減り、教育水準が確保できるようにも思える。
しかし、競争があるからこそ各幼稚園の差別化努力がなされるようになり、かえって教育水準が向上するといる。
また、新規参入を広く認めることで、むしろ入園希望児や保護者の選択の幅は広がるといえる。
それにも関わらず、不許可処分をすることは、教育水準維持や入園希望者や保護者の選択の幅の確保という目的との間に実質的関連性があるとはいえない。
4. したがって、X県知事の不許可処分は、学校法人Aの幼稚園を設置する自由を侵害し、26条1項に反し憲法上許されない。
以上
上記答案を参照しながら、これまで掲げたポイントについて検証しましょう。
・形式面について
一文を短く、接続詞を多用し、かつ目立つようにする、改行、ナンバリング、最後に「以上」とつける、といった点は答案を見ながら確認してください。
・内容面について
構成を追って説明した後、その他のポイントについて述べます。
まず、人権処理パターンといわれるものですが、それぞれの問いの冒頭において、誰(受刑者A、学校法人A)のいかなる人権(投書をする自由、幼稚園を設置する自由)が、誰によって(刑務所長、X県知事)侵害されているかを明示しています。
そして、まず「誰」というところにつき、それぞれ「受刑者」「法人」という点で自然人ではありませんので、特別権力関係や法人の人権享有主体性の論点に触れています。もっとも、これは前提論点ですので、大展開しないというのが大切です。重要なところは厚く、そうでないところは薄くというメリハリをつけることは不可欠といえるでしょう。
次に、それぞれの自由が憲法上いかなる権利といえるのか、という条文上の位置づけについて考察しています。「憲法上の問題点」について聞かれているのですから、憲法上その権利が保障されるのか、という点を論じることになるのです。条文がストレートに想定している自由ではありませんので、その条文とその権利との間を説得的に埋めることが求められます。だいたい、当該権利の性質から条文に当てはまるというか、条文の趣旨から当該権利も保護すべきというか、というパターンが多いでしょう。
さらに、憲法上保障されるとしても制約を受けるため、いかなる制約までなら憲法上許されるのかという違憲審査基準を論じます。この違憲審査基準という規範を定立する際に、両答案とも反対利益に言及しています。この反対利益への配慮というのはあてはめにおいてのみやっている方が多いのですが、規範定立のところでも反対利益に配慮する姿勢を見せると、説得力が増します。
もちろん、ケースバイケイースですが、規範定立において反対利益に配慮する実例として参考にしてください。また、「重要な権利」という際に、どう重要なのかを具体的に示しています。これを示さず、ただ、「○○の自由は重要な権利。だから厳しい審査基準で」と構成しても説得力がありません。ワンクッション自分なりの評価をかませる、というのは重要なテクニックです。
加えて、当てはめですが、この「当てはめ重視」というのは各予備校、各種答練で頻繁に言われます。しかし、具体的に何をすればよいのかということをはっきり示す指導者はあまり多くはおらず、多くの受験生は@とりあえず答案の文言を引っ張ってきてA手探りでボリュームだけを増やしているだけ、というのが答案を添削してみられる現状です。
しかし、我々は、この「当てはめ重視」につき、具体的に@問題文の事実に評価を加え、Aそれを自分の結論への論理の流れに乗せるということを提唱しています。上記答案では、問題文の設定事実である、「新聞」「投書」にそれぞれ「不特定多数の人の目に入るもの」「一読者の単なる意見表明」という評価を加えています。そしてこれを、自説を導くための他説批判のフレームにのせて使っているのです。このスタイルを体得すると、本試験問題の当てはめにおいて手探りでやることはなくなり、現行司法試験ですと論文本試験初日一科目が非常に楽になります。
最後に、「複雑な事案を単純に」と「キーフレーズを自分の言葉で」について触れます。
まず前者についてですが、例題2は、「幼稚園の設置の自由」を営業の自由として22条1項の話として処理することもできますので、「この自由は26条1項と22条1項によって保障される」と根拠条文を二つあげる方がより正確かもしれません。しかし、そうするとそれ以下の処理が複雑になります。
出題者も、そうやって答案を複雑にして自滅するのを狙ったのかもしれません。そこで、60分で仕上げられかつ一読して論理の流れがわかりやすくなるように、意図的に22条1項の話には目を瞑り26条1項の話だけにしています。それを受けて、問題文の文言のうち「経営基盤が不安定になり」という言葉だけは意図的に取り上げていません。実際の本試験後返却された評価でも26条1項にしぼった本答案のスタイルでA評価(最高評価)を受けていますので、この戦術は試験戦略上妥当であるといえますし、実務的な観点からも、複雑な事案をシンプルにまとめるというのは当然ながらに求められるところです。参考にしてみてください。
後者についてですが、例題1の答案を見てください。多くの受験生はこういった問題においては「21条1項が保護しているのは、自己実現の価値と自己統治の価値を内実とする表現の自由→○○は自己実現と自己統治に資する。→よって、21条1項で保護される」と書きます。もちろん間違いではありません。しかし、「自己実現の価値」「自己統治の価値」の中身を自分の言葉でコンパクトに示すだけで、読み手の安心感と評価はがらりとかわります。
いわゆる「論証吐き出し答案」と見られないためには、当然論証パターンで頭の中に一度入れ定着させた上で、答案にのっける際に論証内のキーフレーズを自分の言葉でフォローするのです。ただ、大展開してはバランスを失します。そこで、「自己統治の価値とは・・・」と説明するのではなく、事案を生かしながらさらりと自分の理解を示しています。
【4】最後に
以上、実戦的な視点も交えながら、司法試験の論文答案の作成方法についてみてきました。ここに掲載したのはスキルのほんの一端であり、お伝えすべきことはまだたくさんあります。また、こういった技術は、個別具体的な失敗を繰り返すことで初めて身につくものです。
法律の勉強、司法試験の勉強が完全独学で成立しえないのは、知識を入れることよりも、どうそれを書くか、という方が重要だからです。そうしたアウトプットというのは伝統的、歴史的「作法」をわかっている第三者に見てもらわねば絶対に伸びません。そのため、多くの受験生は答案練習会(答練)に通っています。
しかし、多くの大手予備校の司法試験向けまたは法科大学院既習者向け答練の添削(除く行政法)は、合格者ないし論文試験複数回A評価獲得者が、一枚あたり550円前後のお金をもらう中、そのお金にペイするレベルでの添削しかなされません。中には一枚を絶対に3分以内で添削すると豪語する人もいます。こうした状況であるため、2005年合格目標以降の答練では各予備校が「プラチナ添削」「ダブル添削」などとさまざまな名で、別途に高い追加料金支払いを請求して丁寧な添削をするコースを設けるようになりました。
当会では、実体験を通じて身に着けたスキルを懇切丁寧な添削を通じて、みなさんに提示していきます。具体的には、司法試験論文試験過去問と法科大学院既修者試験の全過去問を用いながら、それぞれの科目の「スタイル」を意識した添削を行うとともに、一定枚数以上指導した生徒さんにはカルテを作成し、ご自身の書く答案と目指すべき答案との距離を可視化していきます。
独学の方、予備校に通っていらっしゃる方、法科大学院未修者コースに通っている方、さまざまな方のそれぞれのレベルステージに応じた、意義のある個別指導が当会の特徴です。また、答案を通じて見えた弱点から、ご希望の方には勉強方法のアドバイス(推奨参考書や学習ペース、予備校の併用方法、既習者ほか)も提供しております。完全初心者の方には1から指導しますし、予備校に行かれている方は、受講講座(法律入門講座、論基礎、論文マスター、などの基幹講座からローラー、A答、前後期論文講座などの答練まで)を配慮した指導を行いますので、それらのフォローや過去問つぶしの一助としてもらえればと考えます。
今日、司法予備校業界でも過去問の重要性が見直され、レギュラーシーズン(論文直前期でない時期)に「過去問答練」と名をうつ講座が設置されるようになりました。しかしそれらは、講義もセットで付けられており、きわめて高い値段とその講義を聴く時間がとられてしまいます。アウトプットの練習は、とにかく手を動かし、たくさん答案を書き、たくさん失敗することです。良い添削指導員の添削指導を直接受けることです。講師の話を聞いてきるだけでは絶対に上達はしません。これは丁度、オリンピックの中継放送を見ているだけで金メダルを取れると妄想するようなものです。
当会の講座は丁寧な添削のみに資源を投下しています。受講生の方も無駄な講義に時間やお金をとられることはありませんので対費用、対時間効率は比べるべくもないといえるでしょう。当会の、合格ノウハウに裏づけされた懇切丁寧な添削指導や学習相談を通じての完全個別指導が、みなさまの栄冠獲得の一助になることを願います。
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