知的財産法概説
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知的財産法と言われたら、皆さんは、どんなイメージを抱かれるでしょうか。今、「知的財産法を活用しよう!」「知的財産法の時代だ!」というようなことが、様々なところで言われています。しかし、いったい、知的財産法とは何なのでしょう。その実態を分からずしては、知的財産法を使えるようにはなりません。そこで、ここでは、知的財産法とは何をさすのか、何故今の時代に注目されているのか、具体的な法律の例という3点について解説したいと思います。



1.知的財産法の本質・・総称


「知的財産法」とはどんなものなのでしょう。「法」と名前が付くからには、法律の1つかと思われる方もいらっしゃると思います。しかし、どんな法律全集を見ても、「知的財産法」という名前の法律は存在しません。それもそのはず、「知的財産法」とは、法律の名前そのものではなく、いろんな法律の総称なのです。


では、どんな法律達が集まって「知的財産法」を構成しているのでしょうか。具体的な名前をとりあえず挙げてみます。知的財産法の中に含まれる法律は多数ありますが、有名どころでは、特許法・商標法・著作権法・不正競争防止法などがあります。どれか聞いたことはありますか。



2.知的財産法の共通の役割・・知的財産法が守るもの



知的財産法がいろんな法律の集合体であって総称であるということを理解したところで、何故そのような総称が出て来たのでしょうか。それは、これらの法律には、共通する役割があるからです。それこそが、知的財産法という集合体で今の時代に注目されている理由なのです。


そこで、おおざっぱな知的財産法が、「知的財産法」として、集合体で注目されている理由を理解する為、その共通する機能について理解しましょう。


知的財産法は、文字通りに言えば、知的な財産を守る為の法律の集まりです。では、知的な財産とは何でしょう。知的財産。はっきり言って偉そうな名前です・・・何をもって「知的」と評しているのか、そんなこと人によって違う気もします。他にも知的なことは幾らでもあると思いますが、この場合、知的財産とは、今まで世間一般の人が思いつかなかったような、目に見えない知識やアイディア、又はそのような目に見えない知識やアイディアが具体的に表現され反映されたものをさしています。


要は、「新しい創造や創造物」が知的財産なのです。法律用語で、知的財産とか無体財産と呼ばれるものです。


「俺が、それ、1番初めに考えたんだぞ!」小さい頃、そんな悔しい思いをしたいことはありませんか?1番初めに自分が考えた遊びを、友達がさも自分が考えたように他の友達に話して、その遊びは学校中で流行、みんなに話した友達は、みんなからヒーロー扱い・・・俺が初めに考えたのに・・・・


こんな場面と知的財産法が予定している場面はほぼ同じです。そんな悔しい思いをしなくて済む為に作られた法律なわけです。


新しい創造や創造物は、1つの種類では納まりきりません。そこで、更にいろいろな種類に分類し、その種類に適した法律を1つ1つ作る必要がありました。だからこそ、知的財産という新しい創造と創造物を守るという共通する役割をもつ複数の法律が、知的財産法という総称の元に存在するに至ったわけです。




3.知的財産法が注目される理由



知的財産法が総称で、それが共通して新しい創造と創造物を守っていると理解したら、今、知的財産法が注目されている理由が分かって来る気がしませんか。そう、新しい創造と創造物が大事!と思われ始めたからです。


新しい創造と創造物が大事な理由。それは、下世話な話ですが、ビッグマネーと名誉を生み出すのです。


考えるに、地球には、いろんなものが存在し、人が知らない未知のものが沢山ありました。過去に、コロンブスはアメリカ大陸を発見したし、誰かは石油とかを発見したでしょう。それをただ、知らない人に紹介さえすれば、有名になったりしました。


しかし、現代では、そんな発見は、し尽くした感じがあるのです。勿論、まだまだ人間にとって未知のものはあります。例えば遺伝子の世界や宇宙などでは、まだまだ発見すべき存在があるかもしれませんが、それはちょっと特殊です。


みんなが一通りのことを知ったら、次は、何に価値があるのでしょう。それは、みんなが知るはずのない、自分にしか出来ないアイディアを創ることです。物を使ったとしても、ただの「物」ではない、その物に工夫です、加工です、発展させた未知の新たな「もの」なのです。



4.いろいろな知的財産法

 

それでは、どんな「もの」が新しく、未知のもので、法律によって守られるべき価値のあるものなのか、具体的に見ていきましょう。前述のように、知的財産法は、守る対象によって異なる法律があるので、個別に見ることにします。



(1)   特許法

@     特許法の目的

特許法は、「発明」を保護する法律です。「発明」の内容は、一般的に連想されるもので大丈夫でしょう。発明家が金銭的にも恵まれず、部屋にこもって、実験を繰り返し、繰り返しして、遂に世紀の大発明を!!というストーリーに集約されます。この発明家が一生懸命作ったその発明品を使用したり利用したりする権利(特許権)を、発明家に独占させることを国家が認めてあげ、発明家の苦労を報いることで、発明家の活動をより推奨し、よって、国全体の産業をより発達させようと言うのが、特許法が成立した目的です。(特許法1条)

 

A     特許権が権利となるまで

では、どのように発明家は、発明品を独占させてもらえるのでしょう?それは、登録です。「誰が」「どのような内容の発明」かを、特許登録原簿に記録してもらうのです。登録してもらうには、どのような内容の発明であるかを知らせる書類(願書・明細書・要約書・図面等)を揃えて、特許庁長官に出願し、審査を受けて、これに通れば、晴れて発明家は発明品に対し、特許権を所有することが出来るのです。

 

B     特許権の内容

では、特許権を所有するとどんな権利を具体的にもらえるのでしょう?これは特許法の目的にも通じますが、発明家(特許権者)の承諾なしに、第三者が発明品や発明品と類似のものを製造したり使用した場合に、必要な裁判手続きを経れば、その製造や使用を差し止め出来たり(差し止め請求)、それによって、発明家が本来独り占め出来たはずの損害を償わせられたり出来る(損害賠償請求)わけです。最悪な場合、無断で発明品を利用した第三者には、刑事罰もあるのです。しかし、発明家は、ずっと発明品を独り占め出来るわけではありません。特許権には期限があり、今は、特許権の有効期限は医薬品などを除けば20年ということになっています。これは、20年も独占したなら、その後は、発明品を誰もが使えるようにして、発明品を公共の為に役立て、産業全体の発達を促そうとする為です。

 このようにして、発明家は、発明品を大量生産して、売ったりすることで、利益を上げられたりするわけです。

 

C     現代における特許権争いの具体事例

現代においては、このように単純に行かないケースが多くあります。

例えば、上の文章で言うところの発明家は、ほとんどの場合が個人ではなく、企業です。企業がこんな効果のある発明品を作って儲けようと、従業員として研究者を雇い、彼らを総動員して発明品を作るわけです。勿論、企業も、ライバルがいます。A会社が実験中に、同業のB会社が、同じような発想で、同じような実験をしていて、両社が同時に同じ発明品を完成させてしまったら・・・・これは、早い者勝ちです。どっちが早く特許庁に出願出来るかにかかっています。(先願主義)

また、所謂、産業スパイの問題もあります。同業者が何か実験をして、いい発明品が出て来たらしいとの噂があって、それを頂戴して、先に登録してしまおうと考える不届きな人間も多くいます。こんな場合は、特許権を登録する際の審査の段階で、出願者(この場合泥棒の方で、これを冒認出願者とも言います)以外の第三者(この場合は、本当に発明した発明者ですね)が異議を唱える制度で救済をすることになります。

更に、発明品と言っても、どこまでが発明なのだ、というのも複雑になって来ます。前述しましたが、発見と発明は基本的には異なるものです。しかし、最近の研究の中には、確かに、発見ではあるが、相当な努力と発見するまでにいろいろな発明に匹敵するほどの研究をしなければ出来ない発見もあるわけです。例としては、遺伝子の構造や薬品に用いられる化学物質があります。この場合、純粋な発明ではないけれど、特許法の保護を受けられないだろうか、というのも論争の1つです。これに関しては、「発明」の要件を拡張したりして、保護を受けるのが相当と言う場合には対処出来るようにしているのが最近の風潮です。この風潮で、ビジネスの方法を保護するという「ビジネス特許」なんていう言葉も出て来ています。

 

素晴らしい発明をすると、特許権をもらえて、一定期間発明を独占できて、その後はみんなが利用できるようにし、国全体の産業を発達させようという、新しいものを、産業という面から保護しているのが特許法なのです。

 

(2)   商標法

 特許法の他にも、新しいものを保護する法律はあります。ここでは商標法を見てみましょう。特許法による特許権よりも皆さんに実生活の中で馴染みがある法律かもしれません。



@     商標法の目的

商標法は、今度は物体ではなく、「商標」と呼ばれる商品やサービスについて用いられる標識を保護する対象とします。この標識とは、文字、図形、記号、その他立体的な形状である種の商品やサービスを特定する為にあるものです。



抽象的なので、商標の具体例を出してみると、マイクロソフト社のウィンドウズの旗マーク。これは商標です。誰かが勝手にあのマークを使ってはいけないのです。後は、タバスコなんて言うのも、あの辛い香辛料自体の名前と思いがちですが、実は、商品の部類としてはペッパーソースであり、「タバスコ」はアメリカの製造会社の商品の商標名です。



ある1人の商人が、石鹸は石鹸でも、通常売られている石鹸よりも、ずっと泡立ちのいい石鹸Aを開発したとしましょう。(この開発段階で、特許権を取得しているかもしれませんね・・・)この石鹸Aを売り出す時に、ただ「石鹸」では消費者に売り込めないから、名前を付けてパッケージにインパクトのあるマークを付けて出荷しようとなりました。その名前とパッケージは、商人が開発した特定の泡立ちのよい石鹸Aを象徴するものであり、消費者が他の石鹸とその石鹸Aを区別する指標となる重要な位置を占めるのです。だから、このある特定の商品やサービスを守る標識たる商標は守られなければならないとなり商標法の登場になります。

保護すべき新しい「もの」の内、先ほどの特許法がより産業を発達させるという工業的な面に注目しているのに対して、商標法は大量種の大量生産を可能にした時代の産業面に加えて商品取引を促進させるという消費者社会の面にも注目した知的財産法の1つだと言えます。




A     商標が権利となるまで

 商標権も特許法と同様、登録制度があります。制度への出願も、商標として認められる要件は違いますが、登録までの流れは一緒です。商標として登録したいマークや名称を特許庁長官に出願し、審査され、問題が無ければ、商標として登録されます。



B     商標権の内容

 では、商標として登録されると、どのような権利がもらえるのでしょうか?商標権は、商標の排他的な独占権という点で、特許法と似た効力を有しています。もし、自分の商標権と類似の標識を掲げる第三者がいた場合、差し止め請求(商標法36条)や、損害賠償請求、不当利得返還請求が出来ます。特に、商標権として重要になるのは、信用回復請求であると思われます。

先ほどの話で言うと、石鹸Aが高品質で売れているのに、他の業者がその人気にあやかって似たようなパッケージで石鹸A’を売り出したとします。この為、消費者が間違えて石鹸Aのつもりで石鹸A’の方を買って全然汚れが落ちず落胆し、以降は石鹸Aを買うつもりがなくなってしまった。という場面が想定出来ます。石鹸Aと石鹸A’を間違えて買う消費者も悪いですが、石鹸Aを作った商人は、自分の製品でない類似品石鹸A’のおかげで、石鹸Aの評判まで落ちてしまうという損害を被っています。この評判を回復させる請求が出来るのです。

このように、商標権者は、商標を登録することで、自分の商品の価値を、確実に消費者にアピールし、取引が可能になるのです。


  C現代の商標権

    商標権は特許法と異なり、そこまで世の中の発展の早さに対応しきっていないという種類の権利ではありません。

しかし、現代のような人によって様々なニーズが分かれる消費社会になると、商品とその商品の特長の区別が、消費者にとっては重要になって来ます。例を挙げれば、ブランドものの鞄とその模造品の両者の氾濫している事が挙げられるでしょう。そこで、商標とそれに象徴される商品を、市場に集う人々にとって分かりやすくすることで、人々が各々望む商品を間違いなく取引出来る、確実さのある市場を作り上げるという点で、商標法は重要な役割を担っているのです。



5.終わりに




今回は、特許法と商標法のみを特に見てみましたが、知的財産法と呼ばれる新しい創造と創造物を守る法律群の中には、この他にも、著作物を守る著作権法や、特許法や商標法や著作権法がきちんと作動し、この秩序を乱している者がいないかを全体的に取り締まる役目をする不正競争防止法などもあります。



これらのたくさんの法律が相互に働きあって、創造と創造物という新しいものを創り出す力を保護し、よりよい社会を作る一端を担っているのが知的財産法と言えるでしょう。





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