根底から学ぶ司法試験
具体的勉強方法とその考え方

学びやすいから、継続する。 継続するから確実に合格する


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【司法試験の勉強法】



ここでは、司法試験または法科大学院既修者試験に初めて挑む方・興味がある方に、勉強の仕方を示しつつ具体的な問題を通じてその内容の一端をお伝えします。


0.はじめに

司法試験とは周知の如く、法曹(弁護士、裁判官、検察官)になるための試験です。これまでは合格率がおよそ2%〜3%で推移し、平均受験勉強年数が6〜7年、合格者は東京、早稲田、慶応、中央、京都の各大学出身者で8割以上が占められるような難関試験でした。しかし、この状況に今日大きな変化が起きています。その大きな理由は、司法試験の合格者の大幅増と法科大学院の設置です。


まず前者の合格者増についてですが、長い間500人〜700人であった合格者数がここ数年で1500人までに増やされることで、「合格する実力はあるが僅差で受からない」という実力者層が一掃され、2年ほどの勉強で受かる人も増えてきました。


また、受験生の層も広がり法学部以外の人や、上記大学出身者以外の合格者の増加も特徴的です。具体的には、平成15年の合格者には、電気通信大学や九州工業大学、東京電気大学といった理系の大学出身の合格者も散見されますし、これまで一人も合格者を出していなかった大学から、特に平成13年以降比較的多くの合格者が輩出されるようになってきています。(試験合格者:法務省)


次に後者の法科大学院の設置についてですが、全国合計68校の法科大学院が2004年に誕生しました。未修3年コースまたは既修2年コースを修了の後に新司法試験を受けるということになりますが、2004年入学の法科大学院1期生は、出身大学も出身学部も年齢も多様で法曹への間口が一気に広がった感があります。2006年実施の第一回の新司法試験合格率は34%と受験者の3分の1以上が受かる試験となっており、これも前述のような過去の状況と比べると試験に受かりやすくなったといえるでしょう。


こうした状況をふまえると、法学部の方はもちろんのこと法学部以外の方も法曹への興味さえあれば挑むに値する試験であるといえます。むしろ、法学部以外の学部であったり、学部卒業後修士号、博士号を修められている方のほうが法科大学院に進むに際しては優遇を受けることも少なくありませんし(北海道法科大学院、大宮法科大学院など)、ご自身の法律以外の専攻を絡めて合格後の仕事の幅も広がるなどさまざまな面でプラスになるといえるでしょう。




1.現行司法試験と法科大学院

では、今から法曹になろうとして、何を勉強してどのコースに進めばよいのでしょうか。現行司法試験を受験するのがよいのか、法科大学院に進んだほうがよいのか。ここは悩ましいところです。結論から述べれば、すべき勉強は変わりませんので可処分時間によって決めることになります。


つまり、一日のうち何時間を司法試験に捧げることができるかという時間数です。


本稿は法律初学者を前提に書いておりますので法律の知識がないことを前提とした上で、@1年間法律の勉強に時間をさけるかA他にやること(仕事や研究など)が多く法律の勉強にほとんど時間がさけないかにわけ、@なら今から現行司法試験と法学既修者コースの併願Aなら法科大学院未修試験をお勧めします。


もっとも、新司法試験は受けるのが遅くなればなるほど、不合格者の滞留によって受験生のレベルが上がる一方で合格率は下がるため(2006年は34%ですがそれ以降回を追うごとに下がり、最終的には20%弱になります)、よほどのことがない限り有職者でなければ@がよいでしょう。


これは法学部以外の方でも同じです。法学部の方であっても、多くの方は大学の講義とは離れたところで独学ないしは各種予備校で法律の力をつけているのが現状です。法学部か否かという点は大きな違いではなく、とにかく独学ないしは予備校での法律の勉強に1年間費やせるかという点をメルクマールにして下さい。


一年間法律の勉強に時間を費やせる方、またはこれまで費やしてきた方は法科大学院既修者試験・現行司法試験の併願を目指して勉強することになります。ここで、「どうして併願なのか」「現行司法試験と既修者試験は同じ勉強をしていてよいのか」という点について説明します。


2004年度の既修者コース入試を振り返ってみると、商法において多少違う傾向のものもありましたが、原則としてどこの法科大学院でも現行司法試験の勉強で十二分に対応できるものでありました。もちろん、一部法科大学院では現行司法試験受験生に有利にならないよう意図的に現行司法試験ではおおよそ出題されたいような問題を出すところもありましたが(東京大学ほか)、こうした問題はみながたいしたことは書けないので差がつかず、結果に大きな影響を及ぼすものではありません(合格者再現答案を見ても、これらの問題はしっかりかけている人は少数でした)。


むしろ、@現行司法試験で基本的とされる知識を、A論文答案のルールにのっけて書けるかというところで勝負がきまったというのが2004年度法科大学院既修者試験の結果からの印象です。そして、司法試験受験経験者の方が、司法試験受験未経験者よりもよい点を取りやすかったというのも、厳然とした事実でした。


したがって、これから法科大学院既修者試験を目指す方も、とりあえずは現行司法試験の勉強にとりかかり、その中で法律の問題の解き方、発想の仕方、論文の書き方を徹底的に身につける必要があるのです。




2.法律の問題の解き方、考え方


「法律の問題の解き方、発想の仕方」というと何か難しそうな気がしますが、さほど難しいことではありません。使う知識は慣れないうちは難しそうに見えますが、慣れれば当たり前のものになりますし、発想方法というのはきわめて普通のものです。ただ、科目ごとの発想の特性がありますので、正しい指導者についてそれをいかに早く自分のものにするかということが大切になります。


その科目ごとの「発想スタイル」が早い段階で確立されないと、知識を詰め込んでも空回りし、受験生という身分から抜け出せなくなってしますのです。これまで指導した生徒さんの中でこの「発想スタイル」ができておらず、長い間伸び悩みに苦しんだという方も少なくなりませんでした。


 では、具体的な問題を通じてその思考方法を考えてみましょう。ここでは司法試験で課される六法(憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法)のうち、民法の、実際に司法試験に出題された問題を例にしてみます。
「民法」と聞いて、ピンとこない方、苦手意識をもたれた方は、こちらに憲法の問題をのせましたのでご覧下さい。




<問題>司法試験平成6年度第二問

Aは、債権者からの差押さえを免れるため、Bとの通謀の上、売買仮装して、その所有する建物及びその敷地(以下、これらを総称するときは「本件不動産」という。)の登記名義をBに移転するとともに、本件不動産を引き渡した。その後、Aは、右の事情を知っているCとの間で、本件不動産につき売買契約を締結し、代金の支払いを受けたが、その直前に、Bが、Dに本件不動産を売却し、引き渡していた。Dは、AB間の右事情を知らず、かつ知らないことに過失がなかった。

ところが、右建物は、Cの買受け後に、第三者の放火により焼失してしまった。なお、その敷地についての登記名義は、いまだBにある。以上の事案において、本件不動産をめぐるCD間の法律関係について論じた上、CがA及びBに対してどのような請求ができるか説明せよ。




さて、どうでしょうか。
まず、この問題を考える前に「民法の発想の仕方」について簡単に述べたいと思います。


一言でいうと「おっさんの主張を考える」ということです。もう少し学問的に、高尚に述べれば「当事者の請求からアプローチする」ということです。これが「民法の発想の仕方」ないしは「司法試験民法答案作成方法」の唯一無二の黄金律です。


司法試験には、「論点」というものが存在し、初学者はまずその「論点暗記」から入ります。そうすると、問題をみても「論点」を探してしまうという解き方をしてしまうのです(これを「論点にとびつく」といいます)。そうすると、さまざまな弊害が生じます。


まず、正しい思考プロセスが示せなくなります。すなわち、いきなり暗記した論点を吐き出すものですから、「どうしてそれを論じるのか」という点が十分に示せないのです。そうすると採点者の印象は格段に悪くなり、当然答案の点数も一気に下がってしまいます。


次に試験戦略上の問題として、出題者はそうした事情は百も承知ですから、選抜するという性質上、論点にとびつく人間を振り落とそうとさまざまなトラップをしかけてきます。具体的には、論点がまったくない問題を出してみたり(平成7年第1問など)、論点を誤認するような紛らわしい問題を出してきたりするのです。


論点から入る人は必ずここにはまり自滅してしまいます。論点を覚えるだけで受かるなら、6年も7年も合格するまでにはかかりません。どうして受からないのかというと大半の受験生は、こうした当たり前の発想が欠落し毎回毎回トラップにはまって自滅しているのです。


特に現行司法試験は12通の答案を、自滅しないでそこそこの水準でそろえられるかということが勝負を分けます。多くの受験生は自滅して不合格になっているというのが現状です。


そこで、自滅しないためにも論点を探すという姿勢から、「正しい発想法」への転換が不可欠ですし、逆に早い段階でこのスタイルを確立できれば、法科大学院既修者試験合格はもちろんのこと、いまから現行司法試験に合格することも十分に可能といえるのです。


では、「民法の発想方法」についてもう少し説明を加えていきましょう。「おっさんの主張」というのはシンプルに「○○したい」ということを考えるということです。例えばお金を貸していたら「金を返せ」と主張したいでしょうし、自分の土地に勝手に人が居座っていたら「出て行け」といいたいでしょう。


この「金を返せ」「出て行け」というのがここでいう「おっさんの主張」です。


まずは、法律論を離れてシンプルな主張からスタートするのです。「おっさん」という言葉にはそうした意味がこめられています。そして、そうした主張を考えたら、その根拠を法律の中から探し構成します。ここで条文や法律上の概念が出てきます。


条文や特定概念がストレートにあてはまるならばそれでかまいませんし、ストレートに当てはまらない場合には解釈をする必要があります。ここではじめて論点が出てくるのです。


この流れの中で論点が登場して初めて点になるといってもよいでしょう。そして、その法律にあてはまるためにはどういった条件が必要かということを挙げ、それが問題の事例にあてはまるかを検討していく、というのが基本的な流れです。


以上をまとめますと、



主張・請求→法律上の根拠の提示→要件定立→あてはめ



という流れになるのです。


これまで受験指導している中で、憲法においては「人権処理手順」といったマニュアルが司法試験業界には流布している一方、こうした民法の発想マニュアルがいまだ十分に広まっておらず、手探りで答案を書いている人が少なくないという印象をうけます。おそらく、この手順を確立できれば民法の答案は安定して高得点を出せるはずです。


以上を踏まえた上で、具体的な設問である平成6年2問を検討しましょう。


まず、CとしてはAにお金を払っています。そこで、「金払ったんだから土地よこせ」と主張したいでしょう。ここで主張について補足しますと、主張の順番は「モノ→金」です。契約は当事者間で有効に成立させるのが双方にとって望ましいわけですから、まず契約を成立させる方から考えます。つまりここでは「金を返せ」ではなく、「払った金と対応するモノ(土地)をよこせ」ということになるのです。こういった点は「法的センス」という言葉で片付けられることが多いのですが、事前のマニュアル準備で対応できうるものです。


次に、このCの「土地をよこせ」という主張を法律で根拠づけます。ここでは、所有権に基づく土地明け渡し請求となります。そしてその要件は、@主張者所有A相手方占有です。


かかる要件にあてはまるかを本問についてみてみますと、@に関して主張者Cに所有権があるといえるためには、AC間の売買契約が有効であることが必要であり、その売買契約が成立したといえるためには、他人物売買との区別のため、もとA所有であることを言う必要があります。ではもとA所有といえるのでしょうか。


この点、もうDが譲り受けてしまっており、Dがもう法的に権利者であればもとA所有とはいえませんし、Dが権利者でなかったのならばもとA所有であるといえます。そこで、Dが権利者といえるのかが問題となってきます。ここで、94条2項という話がでてきまして、Dが94条2項の「第三者」に該当すれば、Dが権利者といえます。では94条2項「第三者」にDはあたるのでしょうか。


このためには「第三者」の意味を解釈する必要があります。ここで初めて「論点」が出てくるのです。論点に飛びつく人で極端な人は、いきなり「Dは94条2項『第三者』にあたるか」と答案2、3行目で展開しだします。しかし、それでは「なぜ論じるのか」が示せないのです。これ以降は、いわゆる「94条2項の第三者」の論点を展開し、新たに独立した法律上の利害関係を有する者、無過失不要、登記不要とした上で、本問Dがそれにあたるかをあてはめます。


これが上記、「主張・請求→法律上の根拠の提示→要件定立→はてはめ」の具体的な展開方法です。本問においては、こうしたスタイルで他の問題も処理することで合格答案が仕上がります。




3.最後に


以上、民法を例にあげ「法律の問題の解き方、考え方」を示しました。ここでは民法のみを扱いましたが、他の法律においてもそれぞれ同様の発想パターン、合格答案作成パターンというものがあります。一定の知識を保有していることを前提とはしますが、こうした正しいアウトプット方法こそが、合否を分けているというのが現状です。逆に、各科目ごとの正しい発想法を早い段階でマスターすれば現行司法試験であろうとも短期合格は高い確率で狙えます。


これまでの指導経験上、司法試験合格に必要なファクターは、概括的な表現になりますが


「熱意4、方法3、時間2、能力1



という印象を受けます。前述したとおり、学歴や所属学部も今日ではさほど大きな障壁にはなっていません。それでも依然東大生の合格者数が多いのは、彼らのポテンシャルの高さもさりながら、周囲に正しい勉強法を教え合い修正し合う仲間がいる結果、熱意を維持しながら正しい方法で勉強できる環境にあるというのが最大の理由だと彼らを見ていて思います。


逆に言えば、正しい指導を受け、自己の中でモチベーションを維持し続ければ、合格の栄冠は誰の頭上にも同じように輝くのです。本稿でそのほんの一端を示しましたが、当会は現行司法試験、法科大学院既習者試験その双方にノウハウを有しております。そのノウハウをもって、みなさまの栄冠を勝ち取るための「正しい指導者」として、頼ってきた方を目的地へナビゲートしていきます。






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